■デハ3499について
デハ3499は、東京急行電鉄(東急)の前身目黒蒲田電鉄・東京横浜電鉄が共同発注したモハ510形の最終番号モハ565として、1936年(昭和11年)に神戸の川崎車両製造で製造されました。モハ510形は50両という、私鉄電車としては単一形式の戦前最多量産記録を持っています。鉄道敷設と宅地開発を一体的に進める事業を生涯かけて邁進した東急総帥五島慶太の、事業に賭ける意気込みの一端を垣間見るものだと思います。
大東急併合に伴い、デハ3450形3499となり、戦後の更新修繕で「見た目の」木部が無くなり、窓が100㎜拡大されるなど、印象はかなり変わりましたが、両運転台構造はそのまま保持され、検査代車として目蒲・池上線等で旅客営業したり、こどもの国線休園日単行運転、貨物列車や回送列車の牽引等、縁の下の力持ちともいうべき幅広い活躍を見せた車両でもあります。
現在使用されているTOQ-iことデヤ7500系事業用電車はデハ3499の直系の「孫」ともいうべきものですし、奇しくも現設置場所から程遠からぬ、上毛電気鉄道大胡列車区にて動態保存されているデキ3021号電気機関車は、デハ3499にとって営業・事業用貨物列車や回送列車等の牽引や入換等、互いに長きに渡り共に東急線の裏方を支えた、僚友同士ともいうべき存在です。

1989年の3000系列営業運転引退後、デハ3499は架線検測車デヤ3001と共に牽引・入換用等の事業用に専念しますが、田園都市線ATC化に伴い、1992年の「東急70周年記念電車」での(旧)目蒲線におけるイベント運行を事実上のさよなら運転として、翌93年除籍、東急車輛製造に譲渡され、金沢八景-京急神武寺間における新車搬出等の牽引車として活躍しました。2002年に同じく東急から7000系譲渡に伴い引退、その後は工場敷地の一角に保管されていました。

デハ3499

■保存の経緯
2010年3月、デハ3499の解体について弊会代表者が偶然耳にする機会があり、急遽(旧)東急車輛製造様に対し譲渡の打診を行い、その根拠として本車を受け入れ、保存するための手筈を整えることとなりました。情報が入った段階で解体まで1週間しかなく、一時は絶望的かと思われましたが、幸い、土地及び輸送費についても、かなり無理な負担があったとはいえ目途が立ち、解体予定日前日に解体中止及び正式な譲渡申し入れ、同6月に私たち自身の手で軌道敷設、同8月に関東平野を縦断し、3日をかけて群馬県赤城南麓の現所在地へと搬入しました。

■保存の意義と方針
保存に至った原動力として、「愛好者」としての趣味的観点の一方で、デハ3450形という電車が戦前の目蒲・東横線、戦後の田園都市線という、電車網を骨格とした東京郊外発展の、伸るか反るかの黎明期を支えた存在であることは疑いようのない事実であり、「開発」の2文字を背負ったこの電車を、社会的・技術的・文化的なあらゆる面を通じ後世に伝承することを保存の最大意義と考えています。すなわち、私共はデハ3499を、欧米で一般的に言われる「ミュージアムカー」と位置付けています。
また、電車は誰の財産的所有であろうと社会的公器であり、私共は電車を社会からお預かりしていると考えますので、可能な限りの公開を行いたいものの、通常無人ゆえ盗難や破損に対する不安は払拭できないものがあります。幸い、設置後3年を経て、故意の破損や盗難等は全く発生していません。
レストア活動をするにあたり、目標設定年代を1980年代半ばごろ、営業運転に使われた最末期とし、ドアステッカーや吊り広告等も含め、営業運転当時の世情世相等まで回顧できるようにする一方、高圧系・走り装置系以外の低圧電源系や空気系機器(灯具類、ドア、パンタ、ブレーキ、警笛など)はできる限り復活させるべく、整備を進めています。昨今、1980年代・東急沿線というテーマで吊り広告の収集を重点的に行っています。修復後の車内には、これらが重要な役割を果たすものと期待しています。

修繕活動

■現車の状態と修繕活動
戦前製の所謂通し台枠構造の電車ですので、根本的には大変頑丈な構造ですが、海に近い箇所にあったことから外板の塩害が著しく、裾部を新品の鋼板に交換する切り継ぎ溶接作業を要し、地道かつ技術力を要する作業が続いています。2014年10月現在、7割程度の裾切り継ぎが終わり、順次パテ付け及び研磨作業を推進しつつあります。また、屋根も穴あきなど劣化著しく、ほぼ専従状態のメンバー重点的補修を行い、雨漏り等は収束を見ています。
一方、元空気ダメに空気を送り込み、まずは警笛タイフォン、次いでドアエンジンやブレーキシリンダ等の動作試験なども逐次実施しています。
来春にはスタートから早5年。そろそろ修理に決着を付け、活用段階にシフトする時期と思います。

■活動日とアクセス
原則第三土曜日を公開活動日とし、その他随時実施しています。
前橋駅前6番バス乗り場より
赤城山ビジターセンター行 龍の口下車徒歩10分
赤城青少年交流の家行(夏季のみ) 総合グランド下車すぐ

■Facebookグループ
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