■保存の経緯
2010年3月、デハ3499の解体について弊会代表者が偶然耳にする機会があり、急遽(旧)東急車輛製造様に対し譲渡の打診を行い、その根拠として本車を受け入れ、保存するための手筈を整えることとなりました。情報が入った段階で解体まで1週間しかなく、一時は絶望的かと思われましたが、幸い、土地及び輸送費についても、かなり無理な負担があったとはいえ目途が立ち、解体予定日前日に解体中止及び正式な譲渡申し入れ、同6月に私たち自身の手で軌道敷設、同8月に関東平野を縦断し、3日をかけて群馬県赤城南麓の現所在地へと搬入しました。
■保存の意義と方針
保存に至った原動力として、「愛好者」としての趣味的観点の一方で、デハ3450形という電車が戦前の目蒲・東横線、戦後の田園都市線という、電車網を骨格とした東京郊外発展の、伸るか反るかの黎明期を支えた存在であることは疑いようのない事実であり、「開発」の2文字を背負ったこの電車を、社会的・技術的・文化的なあらゆる面を通じ後世に伝承することを保存の最大意義と考えています。すなわち、私共はデハ3499を、欧米で一般的に言われる「ミュージアムカー」と位置付けています。
また、電車は誰の財産的所有であろうと社会的公器であり、私共は電車を社会からお預かりしていると考えますので、可能な限りの公開を行いたいものの、通常無人ゆえ盗難や破損に対する不安は払拭できないものがあります。幸い、設置後3年を経て、故意の破損や盗難等は全く発生していません。
レストア活動をするにあたり、目標設定年代を1980年代半ばごろ、営業運転に使われた最末期とし、ドアステッカーや吊り広告等も含め、営業運転当時の世情世相等まで回顧できるようにする一方、高圧系・走り装置系以外の低圧電源系や空気系機器(灯具類、ドア、パンタ、ブレーキ、警笛など)はできる限り復活させるべく、整備を進めています。昨今、1980年代・東急沿線というテーマで吊り広告の収集を重点的に行っています。修復後の車内には、これらが重要な役割を果たすものと期待しています。 |