は じ め に

 
 

 1991(平成3)年に日本鉄道保存協会が生まれてから、24年が経ちました。現在の会員数は50団体まであと少し、発足当初の会員は車両の動態保存をしている14団体でしたが、その後有力な鉄道博物館、意欲にあふれる地方自治体、ボランティアのグループなども加わり、多彩な顔ぶれがそろってきました。まことに喜ばしいことであります。
 本年は、世界保存鉄道協会WATTRAINの第2回総会がさいたま市の鉄道博物館と東京都心の東京ステーションコンファレンスで開かれるのに合わせて、日本鉄道保存協会の総会も東京で開催することになりました。この好機を活用して、WATTRAIN出席の各国代表をパネリストに迎えて鉄道遺産の保存活用に関するシンポジウムを開催し、海外の先進事例を学びたいと思います。また、WATTRAINのメンバーと共同でJR東日本大宮総合車両センター、東武博物館、東京スカイツリーを訪問し、合同の夕食会も計画しております。これらの機会を通じて、海外の保存団体との交流が深まることを期待します。
 今回のWATTRAIN総会開催にあたり、JR東日本、JR東海、JR西日本の各社から多大のご支援を頂きました。またWATTRAIN一行によるJR東日本大宮総合車両センター、真岡鐵道、東武鉄道、東武博物館、大井川鐵道、JR東海リニア・鉄道館、博物館明治村、嵯峨野観光鉄道、広島電鉄、JR西日本山口線と津山機関庫、片上鉄道保存会の各箇所訪問にあたり、関係の皆様から多大のご尽力を頂くことになりました。このような特色ある総会と見学会を開催できるのは、ひとえに皆様のご厚意のおかげであり、ここに特記して厚くお礼申し上げます。
 先の見えない世の中にあって、いま日本人は、一方で成長と繁栄に期待をつなぎながらも、他方では内面的な精神の安定と文化の豊かさを求めています。日本の近代化を牽引し、戦後復興と高度成長を支えた鉄道の遺産を保存し、その価値を後世に伝える私たちの活動は、このような日本人の心の底にある欲求に添うものであり、私たちは自信をもって理解者と支援者を増やす努力を続けたいと思います。
 創立25周年を迎える来年は、会員数50に達することを目指しつつ、活動の足下を固めるためにさらに努力を重ね、正会員・賛助会員・友の会会員各位のご理解とご協力を得ながら、前進を期したいと思います

2015(平成27)年10月26日
日本鉄道保存協会代表幹事団体
公益財団法人交通協力会 会長 菅 建彦