明日の鉄道保存運動のために

 
 

災害と異常な暑さに終始した夏が終わりました。会員団体の中にも、これら天変地異の影響を受けたところが少なくないと思いますが、困難を乗り越えて前進されるよう、心からお祈り申し上げます。
あと4年で、鉄道創業150年を迎えます。この間日本の鉄道は、1906年の鉄道国有化、1949年の日本国有鉄道発足、1987年の国有鉄道改革と、ほぼ40年ごとに大きな変革を経験しながら、発展を続けてきました。そして、日本鉄道保存協会も、発足して早くも27年が経ちました。
日本鉄道保存協会が発足した1991年、日本経済のバブルがはじけ、長いデフレと低迷の時代に移りました。いま、失われた20年などともいわれる時代ですが、幸いにも鉄道保存の活動は着実に進展し、協会の会員数も増えてきたのは、日本の近代化を牽引し、戦後復興と成長を支えてきた鉄道文化遣産を保存・活用しようという協会の活動が、時代の潮流に合致したからだと言えましょう。多くの日本人が、かつての成長と繁栄の時代の復活を願いながらも、物質面だけでなく精神面の安定、文化的価値の豊かさを求めており、私たちの活動はこうした人々の願いに沿うものであるからです。
しかし、私たちはこの現状に満足してはりません。これからの時代を生き抜き、さらに発展するためには、日本の鉄道保存運動も一段と成長することが必要です。ここであえて「運動」といったのは、鉄道文化遺産の保存・活用という目的を達成するためには、絶えずあらゆる方向に向かって、継続的に活動することが必要だからです。その前提として、保存協会の活動も「誰かがやってくれる」という人任せではなく、個々の会員が主体性をもって全体を支え、前進させる体制をつくることが必要だと思います。
今後の発展のためには、組織体制の整備、財政基盤の確立、そして何よりも求められている人材の若返り、という三つの大きな課題を解決しなければなりません。会員各位が鉄道保存運動の原点に立ち返り、この問題を人任せにせず、自分の問題として考えてくださることを切望します。

2018(平成30)年9月21日
日本鉄道保存協会 代表幹事団体
公益財団法人交通協力会 会長
菅 建彦