は じ め に

 
 

 日本鉄道保存協会は今年で満22歳となりました。当初の正会員は14団体でしたが、今年はついに42団体、当初のちょうど3倍に達しました。当初は車輌の動態保存団体だけで出発しましたが、その後は有力な博物館や意欲にあふれる自治体、ボランティアのグループなども加わり、多彩な顔ぶれがそろってきたことは喜びにたえません。本年は、旧国鉄の承継事業者としては最も多くの動態保存蒸気機関車を保有するJR東日本が正会員として加入してくださり、同社の高崎支社の絶大なご支援を得て、高崎で総会を開くことになりました。総会翌日の見学会は、JR東日本と上信電鉄のご協力を得て、JR東日本高崎車両センター高崎支所と上信電鉄高崎車両区を訪問し、さらにオプションとして碓氷峠交流記念財団のご協力を得て、午後には碓氷峠鉄道文化むらを訪問することになっています。このような豪華な内容の見学会を開催できるのは、ひとえに地元の皆様のご厚意のおかげで、ここに厚くお礼申し上げます。
 一昨年の大震災・津波・原発事故が残した深い傷はまだ癒えませんが、日本経済はようやく長い不況から脱出するかに見えます。リニア新幹線やオリンピック開催のニュースが好感をもって迎えられる反面、既に決まった消費税引き上げの影響がわれわれの仕事や日本経済にどのような影響を与えるか、予断を許さないものがあり、欧米の経済状況や、不安定さを増す近隣諸国との関係など、多くの不安材料を抱えていると言えます。先の見えない世の中にあって、いまの日本人の心は、騒々しい成長と繁栄よりも、もっと奥深い精神と文化の豊かさを求めていると言えましょう。日本の近代化を牽引した鉄道遺産を保存し、その価値を後世に伝える私たちの活動は、現代の日本人の心の底にある欲求に添うものであり、現在の鉄道ブームを単なる流行に終わらせないよう、理解者と支援者を増やす努力を続けたいと思います。
 正会員がついに40団体を越えた今年は、私どもの足下を固める年と位置づけ、法人化の問題や山田コレクションの保全活用などの懸案について、方向付けを明確にしたいと思います。正会員、賛助会員、友の会会員各位のご理解とご協力を得ながら、将来の発展を期したいと思います

2013年10月24日
日本鉄道保存協会代表幹事団体
公益財団法人交通協力会理事長 菅 建彦