は じ め に

 
 

 日本鉄道保存協会は今年で満23歳となりました。当初の正会員は14団体でしたが、今年はついに44団体、当初の3倍を超えました。当初は鉄道車輌の動態保存団体だけを正会員として出発しましたが、その後は有力な博物館、意欲にあふれる地方自治体、ボランティアのグループなども加わり、多彩な顔ぶれがそろってきました。まことに喜ばしいことであります。
 本年は、東北の栗原市と四国の西条市を新会員として迎え、総会は岡山県美咲町で開催し、見学会では日本における保存活動の模範事例の一つである片上鉄道保存会とJR西日本の旧津山扇形機関車庫を訪問することになりました。このような特色ある見学会を開催できるのは、ひとえに関係者と地元の皆様のご厚意のおかげで、ここに厚くお礼申し上げます。
 政権交代後、日本経済はようやく長い不況から脱出するかに見えましたが、リニア新幹線やオリンピック開催のニュースが期待感を盛り上げる一面、4月に実施された消費税引き上げの影響については予断を許さないものがあり、欧米の経済状況や、不安定さを増す近隣諸国との関係など、多くの不安材料を抱えています。
 このような先の見えない世の中にあって、いまの日本人は、一方で成長と繁栄に期待をつなぎながらも、他方では内面的な精神の安定と文化の豊かさを求めていると言えましょう。日本の近代化を牽引した鉄道が残した遺産を保存し、その価値を後世に伝える私たちの活動は、現代の日本人の心の底にある欲求に添うものであり、近年の鉄道ブームを単なる流行に終わらせないよう、理解者と支援者を増やす努力を続けたいと思います。
 また、来年は世界保存鉄道協会の大会を日本で開催すべく、準備を進めております。海外の先進事例に私たちが学ぶだけでなく、多くの日本人に知ってもらう好機であり、当協会の今後の発展に有用な事業と考えます。
 正会員が50に近づいた今年は、私どもの足下を固めるためにさらに努力を重ね、正会員、賛助会員、友の会会員各位のご理解とご協力を得ながら、前進を期したいと思います

2014年11月1日
日本鉄道保存協会代表幹事団体
公益財団法人交通協力会会長 菅 建彦