は じ め に

 
 

今年は1987年の鉄道改革からちょうど30年、このとき財政破綻した日本国有鉄道の分割民営化が実施されてJR体制に移行しただけでなく、民営鉄道を規制していた地方鉄道法も廃止され、旧国鉄系も民鉄も鉄道事業法のもとに置かれることになりました。まだ記憶に生々しい大改革も、すでに歴史の1ページになろうとしています。
その4年後、1991(平成3)年に日本鉄道保存協会が生まれてから26年、早くも四半世紀以上の歳月を経ました。車両の動態保存をしている14団体で発足した本協会は、その後有力な鉄道系博物館、意欲にあふれる地方自治体、ボランティアのグループなども加わり、多彩な顔ぶれを揃えて会員数50団体まであと少しのところまで来ました。
1991年という年は、それまで続いていたバブルが崩壊し、デフレへと移り変わっていった時期です。その後の長い間、日本の経済は低迷に苦しんできましたが、幸い鉄道保存の活動が着実に進んでいるのは、それが時代の潮流に合致しているからだと言えましょう。先の見えにくくなった時代にあって、いま日本人は、経済の成長と繁栄に期待をつなぎながらも、他方では内面的な精神の安定と文化の豊かさを求めています。日本の近代化を牽引し、戦後復興と高度成長を支えた鉄道の遺産を守り、その価値を後世に伝えようとする私たちの活動は、日本人の心の底にある欲求と願いに添うものであり、私たちは自信をもって理解者と支援者を増やす努力を続けたいと思います。
日本鉄道保存協会にとって現在の最大の課題は、第一に組織と財政基盤の強化であり、第二に若返りであると言えます。これまでは会員相互の交流に重点を置いたネットワークという緩やかな組織でしたが、今後の発展のためには、この二つの課題をどうしても解決する必要があります。かねてからの課題である法人化については、すでに定款案の準備も出来ていますので、会員の皆様のご意見をお聞きしながら、早期の実施をめざしたいと思います。また、様々な工夫と努力を重ねて収入増をはかり、財政基盤を強化するとともに、組織を担う中心となる陣容の若返りを追求し、新たな方向への第一歩にしたいと思います。皆様からのご理解とご支援を期待しています。

2017(平成29)年9月29日
日本鉄道保存協会 代表幹事団体
公益財団法人交通協力会 会長
菅 建彦