■団体の趣旨
横浜市港南・磯子区の久良岐(くらき)公園に展示されている「横浜市電1156号」を修復・維持するとともに、毎月1回、車内を公開するイベントを開催しています。1156号は1952年に製造され、横浜市電が1972年に全廃されるまで走り続けました。代表的な形式だった1150号型の最後の現存車両でもあり、貴重な存在といえます。車両を保存するだけでなく、電停や架線など周囲の情景も再現し、往時を知る人たちへの聞き取り活動も並行して続けながら、「街に市電が走っていた頃」を伝える「よすが」を目指しています。
     *新型コロナウイルス感染拡大の影響で、毎月の車内公開は当面の間、中止します。
輝きを取り戻した現在の1156号
▲輝きを取り戻した現在の1156号
照明を点灯した夕方の姿
▲照明を点灯した夕方の姿

■保存の経緯
2010年末、神奈川新聞の記者(齊藤)が、荒廃していた1156号が解体されるとの情報を聞きつけ、管理当局の横浜市に修復など保存活動を申し出たことがきっかけです。当時は窓ガラスやドア、前照灯、尾灯、座席などの部品・機器類が全て失われ、とても哀れな姿になっていました。40年近くにわたる屋外展示で風雨にさらされ劣化したことに加え、悪意ある人たちによる破壊、盗難などがその理由です。
時を同じくして、公園の近くに本社のある塗装業大手「サカクラ」が、地域貢献の一環でボランティアによる修復作業に協力してくれることになり、横浜市環境創造局、サカクラ、神奈川新聞社の3者で1156号の修復・保存を進めていくための覚書を締結しました。
修復作業は足場を組み、2カ月を費やす大がかりなもので、失われていた窓ガラスやドアなどを極力再現。前後のライトや室内灯も点灯可能としました。座席は相模鉄道から寄贈していただきました。
さらに2014年には同局が車両周辺を大規模に改修し、擬宝珠のような飾り「ポールトップ」を載せた架線柱や、架線、それに電照式の電停標識も新調しました。道路から発掘された市電のレールを車両の前後に埋め込むことで、わずかながら路線の“延伸”も実現しました。
2020年12月からは、横浜市電の運転・運行管理を楽しめるゲームアプリ「追憶の電車通り」(App Store,Google Playからダウンロード)の広告収益を、維持費に充当する仕組みも始まっています。

窓ガラスやドア、ライト、部品などが全て失われ、
荒れ果てていた2011年当時の1156号
■横浜市電とは
1904(明治37)年、民営の横浜電気鉄道として横浜市内に開業した路面電車。軌間1372ミリ。昭和30年代の最盛期には総延長52キロの路線を運行し、年間に1億2千万人を輸送したものの、道路の渋滞や国鉄根岸線の開業などの影響を受け、1966年以降、順次廃止が進み、1972年3月31日に全ての路線がバスに置き換えられ、営業を終えた。他事業者への譲渡車両はなく、現存するのは横浜市磯子区にある「市電保存館」の7両のほか、市内に4両が残るのみ。

◀窓ガラスやドア、ライト、部品などが全て失われ、
荒れ果てていた2011年当時の1156号